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それから数日して、ワルターは何とか自力で起き上がれるようになった。
毒を受けてから処置をしたとは言え、奥にまで入り込んだものを中和するには薬でもしばらくかかる。
ジェイのいない間にワルターは珍しい種族の世話になりながら、一度もしゃべることはなかった。
一応ジェイも様子を見に行く度に話しかけてはいたのだが、彼はどうしてかこちらを睨むかそっぽを向くばかりだった。





「ワルターさんはどう?」

「ちゃんと寝てるキュ」

再びウェルテスへと、今度は破いてしまったワルターの服の代わりを調達しに行っていた。
そして壊れた輸送車の代わりも。
結局いい案も浮かばず、それにも頭を悩ませながら帰ってきて床へ座る。
今はピッポが留守番とワルターの世話を引き受けており、他の二人はそれぞれ引越しの準備を進めている。
浅く溜め息をつくと、目ざとくそれに気付いたピッポはジェイも寝るようにと言う。

「でも、早くしないと本当に間に合わなくなるからね」

「準備はキュッポ兄さんたちが上手くやるキュ、ジェイまた寝てないキュ」

尻尾をちょこっと振り、心配そうに覗き込まれると弱い。
昔から気が利いて、人一倍優しさを表現するのが得意だった。
羨ましいその素直さの反面、不安の種でもあるわけだが。

「ワルターさんに渡して来るよ」

座ったばかりなのに立ち上がるのは、まだやるべきことがあるから。
寝ていると聞いたワルターの部屋へ行く間にキュッポの視線を感じる。
気付かないふりと気付かれないほど短い付き合いではない。
それでも何も言ってこないのを言い訳にして上へ。
静かな部屋だったが、寝ているはずのワルターは起き上がっていた。
それに多少驚いて、ぼーっとしているのかこちらを向かない彼に近づく。

「ワルターさん?」

「……作戦参謀、一緒に来てもらう」

「え…」

やっとしゃべったかと思ったら聞けたのはお礼とかそういうものではなく、命令口調の低いトーンだった。
そればかりではなく、腕に力を入れるようにしてギシ、と音を立てベットから降りようとし始める。
上手く動けていないのに、その表情は必死だった。
とっさに反応出来なかったジェイはしばらくその横顔を見ていてはっとした。

「何してるんですかあなたは!まだ毒が抜けきっていないんですよ!?」

無理に動けば残った毒がまた回りだすかもしれない。
効率が悪いなんてものではない。
死にたいのか、この人は。

「っ!」

「ワルターさん!」

あまりの突発的で無謀な行為に止まりかけていたが、ワルターがついに足を動かしベットの端まで移動したのを見て叫ぶ。
慌てて押さえ込むようにして動きを制するが、弱々しく手を振って拒む彼に思わず力が緩む。
それにより腕が動くようになる彼の手がシーツを滑った。
不意に支えていた片腕が落ち込み、十分でない身体はそのまま腕に繋がって落ちる。

「!」

ド、と強く低い音が家を揺らして、ピッポが2階へ向かうと何かおかしな光景が見えた。
ワルターが片足だけベットに残し、床に仰向けのジェイの上に乗っている。
ジェイは目をつぶって痛みを堪えるようにしていて、ワルターの方も眉間の皺が濃い。

「ジェイ!大丈夫キュ?」

「う…ん、平気。…ワルターさん?」

至近距離で、上手く鳩尾に拳をぶつけてくれた彼が腕を支えに身を起こす。
多少息が荒いが、問題はなさそうに見える。
ところが彼はそのままの体勢でこちらを睨んできた。

「何故だ」

わざわざ下敷きになったのに、返ってくるのがこういうものなのは何とも言いがたい。
彼の青い目は近く、場合によっては誤解も招くだろう状態でワルターはまた言う。

「何故、助けた?」

「は?」

意味がわからない疑問、助けるための理由。
それが現状でなく、この毒を指すものなのはなんとなく知れた。
だからって、納得はしない。

「いい加減にしてくださいよ」

「貴方、何様なんですか?」

だってそうだろう、人に助けてもらっておいて、何の説明もなく勝手をされてあげく。

「その態度、口は利かない無茶はするしそれじゃまるで…」

子供じゃないか。
どうしてかこの言葉を思うのは二度目だと感じた。
それが不思議でつい中断してしまって、呆然と残された者が動かない。
いつだったか、と考え込んでしまう前にピッポがワルターの肩に手を置いた。

「ジェイは、ワルターさんが心配なんだキュ」

近くにいるため、自然こちらに視線が来る。
驚くべきその発言に自分が呆けてしまいそうだ。

「何言ってるのピッポ!」

「ジェイ、ワルターさんの為に一生懸命だったキュ」

「ピッポ!」

「これ以上ジェイを悲しませないであげてほしいキュ」

はっとしたのは、自分が先か彼が先か。
自分の顔が熱くなっていて、それにもまして熱いものが頬を撫でていた。
急に頭が働かなくなって、自分でも気付かないうちに体力がなくなっていたのを悟って。
それから、










2006.2.17
やっと熱が落ち着いて…きた?
ジェイが口を開けば「ワルターさん」なのは…

修正加え。同27