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「ジェイ君には、ちゃんとお伝えしましたよ」
「宿屋前の散歩人が、足早にダクトへ向かうのを見たそうです」
ワルターが待たされて、待ち続けて、数時間たったころにイザベラが発見してから数十分。
とりあえずミュゼットさんの家とやらに呼ばれて、説明を受けて。
「話が違う」
が第一声。
そのジェイという子供を連れ帰らなくてはいけないのに、どうしてかいない。
約束を忘れるような子じゃないのにね、なんて言われたって、いない。
無言ばかりの彼に笑顔を向けたまま、ミュゼットは困っていた。
怒らせてしまっているようだし、自分からはほとんど話さないし、茶菓子なんて雰囲気もない。
隣に立つイザベラも表情には乏しいが、同じようなものだろう。
「きっと、一度帰るつもりだったのね」
「……何処だ」
「モフモフ族の皆さんと一緒でしょう」
一度そう言って場所を説明してみたら、やっぱり何も言わずに出て行っていた。
何だかセネルさんに似てるわねと、イザベラにこぼさずにはいられなかった。
「キュッポ!みんなに伝えて」
「キュ!」
帰るなりジェイは、進めてきた引越しを急かせた。
皆どうしてだとかは聞かず、せっせとさらに動いた。
聞いている時間が惜しいし、信じているから。
「ジェイ!お帰りキュ!」
「ただいま」
荷物を押し込んでいたピッポ、彼もまた言われた通り忙しそうだ。
ジェイは引越しの移動手段として使う輸送車を調整中のポッポの所へ行く。
途中ホタテを運んだり、一応の備えとして武器を仕入れる他のみんなの様子も伺う。
必要な指示を加えつつ、村の外れの工房まで来ると中から嫌な音がした。
「…ポッポ?」
「キュキュ〜」
改造していたはずの車はなかった。
いや、ジェイには見つけられなかった。
代わりのようにポッポが黒くなってうつ伏せになっていた。
「ポッポ!……また、やったね?」
「キュ〜大丈夫なはずだったキュ」
「駄目じゃないか」
設計図通りに改造したら。
ジェイが見ていない間に描かれ、作られたポッポの発明品は必ず壊れている。
結構な確率でジェイが見たものも壊れたが。
ともかくこれで、今日にも出発の予定だった計画が丸つぶれになった。
焦燥が、ジェイを巡る。
「まいったな」
浅くため息をつきながら紛らわすように周りを見る。
「キュ〜」
「大丈夫だよ」
悪意は全く完全にない彼を責めるなんて誰もしない。
にこりと微笑んでから、本当にまいった顔でとりあえず代用候補を浮かべては消していたとき。
外から数匹の悲鳴が聞こえてきた。
2006.1.23
何だかこればっかり書きたくなってきた。
いけないいけない。