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あいつが気絶した時、俺が見ていたのは綺麗な雨粒だった。





すぐにあのピッポと呼ばれているラッコに似た生物があいつを案じ、
ベットに運びたいのに小さすぎで困っているそれに手を貸した。
自分も本調子でないため予想外に時間はかかりはしたが、
無事に寝かせるとそいつは出て行って、少しだけ見ていてくれと頼んだ声は階下から聞こえた。

「……」

自分もこんな感じだったのだろう、枕に少し沈む髪は乱れて首あたりが汗ばんでいた。
寝ずらそうなその結い紐を知らずのうちに解いた。
こいつがこの状態ではつれていけないではないか。
仕方がない選択の結果として、俺はまだ少し重い手足でもって看病をした。





ジェイという参謀が一日待って起き、看病というか見張っていただけの俺はいつの間にか寝てしまっていた。
呼ぶように言われていたので階段下へと移動しそれに気付いたラッコが頷いて上がってきたので俺もそれに続く。
意識があるときまでは考えていた、あいつの怒った理由を俺は見つけられていない。
そのままあやふやになってしまったが、疑問がそれで終わりということはなかった。
俺は聞いた、どうして迎えの時間にあそこにいなかったか。
あいつが言うには忘れていたらしい。
それに自分の機嫌が悪くなったのは言うまでもない。
かといって今はもう関係はない、これからマウリッツの所へ向かえばいいだけのこと。
当初の目的を果たす為に、改めて俺はあいつに言った。
それが否、という返答だったことに驚きは隠せない。

「……駄目だ」

深く考えたわけではない、いやその必要がない。
メルネスは最優先されるべき人物だと、決まっていたからだ。
例え何があっても。

「…無理は承知です、仕事の責任の重さ、僕はわかっているつもりです。でも…」

言葉を探しているのか、それでも俯いてばかりで新たな文が生まれない。

「家族を、救いたいんです」

それがあのラッコなのはわかっていた。
本当の家族でないこともわかっていた。
ただ、どうしてそんなにも必死で情けない声を出して願うのか、わからなかった。

「お願いします、あと数日だけ」

「どうせ今連れて行ったところで、貴様が役に立つとは思えない」

言ってから気付いた。
自分が今、数日の猶予を与える言葉を発したこと。
任務の先延ばしを決断したこと。
彼の顔に、これ以上悲しみを塗り上げたくなかったこと。

「ありがとう、ございます」

戸惑いがちに、彼は微笑んだ。

「ふん」

確実に、体温が上がっている。





彼らに療養はもう不要だった。
ワルターの毒は既に中和され、指先まで自由に動く。
ジェイはもともとが寝不足、過労という慣れたもので、あれから少しして起き上がった。
彼らは現在、モフモフ族の村を巡っている。
ほとんどの家が荷造りを終え、必要以外のものは残される。
ジェイが姿を見せれば次は何をすればいいのか聞いてきたり、体調に気をつけるように言ってくる。
ワルターも言葉こそ少ないが、ある程度環境に慣れ集まるモフモフ族をあしらっていた。
姿が人でない分、彼なりに憎しみを向けないことにしたのだろうか。





問題にしているのは輸送車の代役であった。
ここから避難場所へは、普通で数週間かかる。
しかもこの一族全てを束ねながらの遠出など、村をモンスターに襲われたとき以来だ。
何か、速度のある、出来れば水陸両用で大型の乗り物が欲しい。
今から作っていたのでは話にならない。
ジェイは毎日そのことに頭を使い、ワルターはその苦悩を見てきた。
彼がその話を持ち出したのは、しばらく時間がたってからだった。











2006.3.3
はいはい、フルでパワーでわかりません。
でも書いてて楽しいのは事実。