「……」

一人欠けてから走ってどのくらいか、モンスターは出現率も下がりただ風景が動く。

最後尾を走り敵に気をつけながら、それ以上に心配を顔にのせるを見かねてウィルが声をかけた。



「わかってるっ」

このやり取りが、数分に一度は行われる。

セネルもちらちらと度ごとに視線をかけ、モーゼスと息を切らしながら目配せしていた。

彼女自身、愚かしいほどの動揺に抑えがきかず、押し黙っているのが精一杯という感じである。

「……、気持ちは」

「わかってる!」

「落ち着くんじゃ!」

モーゼスにまで諭される始末だ。

俯き加減に謝るしかない、唇は固く結ばれたまま。

皆一緒の思いなのも、信じたい気持ちがあるのも本当だけれど。

「……ごめん」

「あのジェイだぞ?策があるに決まってるだろ?」

「あと少しだ、三方面が隔離されているから安全面では申し分ないだろう」

セネルとウィルの励ましにも適当に相槌を打つだけで、眉間は緩まない。

現れる敵には憎悪を向け髪を乱し技を打ち込む。

今は、ただ必死だ。






























ジェイは今幸せかと聞かれたら答える自信があった



家族に囲まれて一緒に笑って幸せだと



こんな風に自分が変わるのには時間が必要だったけれど、人は変わることが出来る



過去は消えないけれど、人はそれを越えて生きることが出来る



温かく、教えてくれたあの人たちを守ろう















ジェイがそろそろ限界だと、スピードを緩め、何気なく空を仰いだとき。

何かが空から降る光を妨げた。

「裂天!!動茸穿猛射っ!!!」

あの人特有の雄叫びとともにそれは聞こえた。

そうか、と立ち止まり光が増幅するのを見つめるジェイは思う。

味方ごと敵を確実に殲滅する。

バカ山賊にしてはいい作戦だと、心のうちで褒めた。

いま自分がいるのは正しくモンスターの集まる中心部。

ここに大技を当てればおそらくほとんどの生物が消えてなくなるだろう。

悲しいなんて思わない。

自分は同じ方法で幾度も、幾人もの命を取り戻せない場所へとやってしまった。

「少しだけ、怒りますからね」

あの人はきっと悔やんでしまう。

そうなったらあの世からでも戻ってきて、怒ってやろう。

やはり微笑を浮かべながら、最後に目にしたひとが彼女でよかったと素直に思えた。

がこちらへ向かって真っ直ぐ落ちてくる。

「……え?」

「ジェイッ!!」

早すぎて正直自分でもわからなかった。

彼女がモーゼスさんの技が発動する前に降り立ち、僕を抱え込んで転がるようになって。

「なっ!?」




























が降りたあと、少しもないうちに最初の槍が大地を傷つけた。

裂天で大量の槍が本当の雨のように鋭く刺さる。

かすれるほどに近くを槍が通っても、モンスターの絶叫が聞ても怯まず、は走り続ける。

絶えない光に包まれて、地面も輝きを増す。

次の攻撃が近いのを悟ったジェイだが、今の状況をどうにか出来ることはなかった。

時間がゆっくりと流れるように感じられ、ワンシーンごとの風景は深い紫に刻まれる。

目を開けられないほどにまでなった光を全身に浴びながらが足に全力をかけて飛ぶ。

反動と重力でがくりと引っ張られるジェイには、その時のの笑顔がはっきり見えた。

それから数秒後の衝撃で彼女の顔を見続けることは出来なかったが。






























「ったぁ〜!ジェイ大丈夫!?」

「え……」

「ヒョオオオオオオッ!!」

あまりにも不思議な出来事をジェイだけが把握しきれていなかった。

は抱え込んだ彼をそのままに腰をさすっている。

モーゼスがどかどか駆けてきて勝手に遠吠えをしている。

「やったぞ!ワイはやった!」

「私が頑張ったんでしょ?」

「なんじゃと!?」

細い顔をさらに細めるほどにまで驚いてモーゼスが講義する。

それを放ってはジェイの顔を覗く。

「大丈夫だった?ジェイ」

「……なんで」

ジェイにしてみれば、死ぬ覚悟までしていたのだ。

大切なひとを守るための死を受け入れようと、確かにその死はすぐ傍にあったのに。

「どうして助けに来たんですか!あんな危ないことして!」

「危ないのはジェイじゃない、珍しく愚問だね」

我に返ったように騒ぎ出す彼にちょっと驚いてからが答える。

モーゼスは意味も知らずにグモングモンと言いはじめた。

「そういうことじゃなくて!なんで…」

「家族が家族助けるのに、理由がいるの?」

そうなの?とモーゼスに首を傾げるに、ジェイは頭が真っ白になった。

自分が信じた、家族という言葉を量り違えていたらしい。

「家族なんじゃ、んなもんいるかい!」

豪快に笑いながらモーゼスは威張ったように体を反らす。

それに習うかのように、も助けた時の笑顔になった。

ジェイはひとり納得したような、しないような考え込む格好だ。

俯き加減なそれにが不審がる。

「ジェイ?モーゼス、ジェイが照れてる」

「何でじゃ!?」

「だ、誰が照れてるんですかっ!」

見破られたのが悔しいジェイはモーゼスに残り全ての苦無を放って追っ払う。

山賊がしっかりと視界から消えるのを確かめると、彼は急に大人しくなってに抱きついた。

「わ、どうしたの?」

「……」

首に腕を回して音がなるくらいきつく抱かれるは顔の見えないジェイに問う。

ジェイは絶対に顔が見えないようにと、可能な限りひきつけてそのまま黙り込む。

頬に髪が流れてくすぐったくても、何かの滴が当たるのを感じても、は動かないでいた。

背中を優しく撫でて、鈴がリン、リンと彼の息に合わせて鳴るのを聞きながら。





「ありがとう」






























2006.1.27
もーすけは愚問という言葉を知らないわけはない。
細かいことは気にしないで(名前変換少ないとか)
…とにかくすいません





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