A counting song of lives

いのちの数え唄






























「焔!」

「魔人拳!」

時間差で立ち上がる炎の中を光の筋が突っ切り、動きの止まっていたタコエッグを貫く。

スカルプチャと呼ばれている青い球体を残すのを見届けないうちに、ジェイとセネルは次の敵へと向かった。










「鷲羽っ!」

鳥の影を纏わせて槍を投げ、それが外れたのを見たモーゼスは悪態をつきながら一旦後退する。

「いっくよ〜!グレイブ!」

ノーマお得意の岩石を突き立たす術が下降してきたピヨピヨヘッドに命中し、他のモンスターの足止めともなった。

「ファーストエイド」

「ありがとう」

先ほど受けた腕の切り傷が治り、さらに精神力も増した気になったクロエは後ろのウィルに目をやる。

ウィルはすぐさま次の攻撃呪文を紡ぎだし、視線だけを交わす。

「烈走刃!」

が右手に持つ短剣を敵に向けて振り下ろし、風を裂く波動を繰り出した。

クロエの近くにいたホッパーが吹っ飛び、身を消す。

!」

瞬時に背中を預けあう位置を取り、状況の散々な有り様を見渡してクロエが溜め息をついた。

「…どうする?相手にするには多すぎだ」

「うん、でも皆散り散りになり始めてる。そっちを何とかしないとっ」

は近づく小さなピヨピヨを容赦なく蹴り飛ばし、今一番離れてしまっているジェイとセネルの所へ走る。

クロエはそれを見て、ノーマとウィルの援護に必死になっているモーゼスを手助けしにいく。

「レイナード!此処は退こう!」

モンスターの一団を駆け抜けてウィルたちに合流したクロエが大声で言い、術を中断されたところだったウィルもそれに頷く。

「セネル達が戻ったら撤退だ!ノーマ!」

「OK〜っ」

逃げる際の体力を確保するつもりなのだろう、ノーマは回復呪文に取り掛かった。

それを囲うようにウィルとモーゼスが動く。










思いの外防御力の高いモンスターたちに焦りを感じ始めていたセネルは、空から降ってくるものに一瞬怯んだ。

それが仲間であるのがわかったころには、その人は奇麗に着地してこちらを気遣っていたが。



「大丈夫?一旦退こうってことだけど」

彼女はクロエと別れてすぐに、メガントを踏み台にしてこの輪に飛び込んできた。

その際スピードを緩める為に、空にいたピヨピヨヘッドに乗りかかるのも忘れはしない。

「他の皆さんはっ?」

たった今まとめて二匹に蹴りをつけたジェイが近くに寄る。

三人はおおよそ三角形を作る形で背中合わせになり、相手を減らしながら話し合った。

「鷹爪脚!」

「たあっ!」

「飯綱落とし!」

短い交し合いのあと、それぞれがの乗り込み方法を真似した脱出を試みる。

爪術の光が弧を描いて失せていく。

一番脚力の優れているジェイはその際のサポートにも回っていた。

高く跳躍した中、無防備となった彼らをホパフライの群れが見つける。

「はっ!」

苦無を放ってそれを近づけさせないようにしていたジェイは、風を切る音を聞くとともに後ろから衝撃を受けた。

「っ!」

「ジェイ!」

たまたま近くにいたピヨピヨが飛び上がり体当たりを仕掛けてきたらしい。

後退を妨げられ、ジェイだけがモンスターの輪の中に再び落下していく。

セネルたちは一応着地を済ませたものの、戻るにも壁が厚すぎてモンスターの塊しか見えない。

「ジェイ!」

がお構いなしに走り出そうとするのをセネルが引きとめるが、彼も動揺していた。

「聞こえますか!」

不安の念に取り込まれるように、モンスターの距離が縮まっていた時、

確かに中からジェイの声が聞こえ、二人はほっと同時に息を吐く。

「待ってろ!今行く!」

セネルとが呼吸を合わせて駆け抜ける体制を整えたとき、呆れた様な声が届く。

「何言ってるんですか!早く逃げてください!」

「え?」

確かにそう聞こえたけれど、信じがたいその言葉の意味に二人は苦しんだ。

「何言ってんだ!」

「一人じゃ無理だよ!」

遠ざけられているのだろうか、ジェイの声が遠くなっている気がするは待っていられないとばかりにセネルを促す。

「いくよっ」

「僕なら平気です!早く戻ってください!」

今度こそ踏み込む寸前で止められたたらを踏む二人は顔を見合わせるが、どうしたらいいかわからない。

こんなに多数の敵を一人で平気なわけはない。

そのうち、後ろの方からノーマとクロエの悲鳴が同時に上がった。

「!」

「まさか!」

この持久戦にパーティー内で体力の少ない二人が耐え切れなかったのかもしれない。

早く戻らないと、二人で二人は守れない。

けれどジェイは一人で囲まれている。

「クソッ」

セネルは苛立った顔で前後を遠見する。

「……」

はこめかみあたりに汗を光らせ、思案顔で戦いに集中することが出来ていない。

セネルがなんとかをカバーするような形で戦況は不利になっていく。

「っ!!」

「……撤退しよう」

呟くようにそう言ったかと思うと、すばやく辺りを見回し始めた。

冗談、とはとても言えない状況で、セネルは自分の耳を疑うよりなかった。



はジェイを見捨てようとしている。



「おい!」

本気か、などとつい聞きそうになったが、彼女の表情を見て、それすら出来なかった。

この中で一番ジェイと付き合いが短く、一番彼を心配するそのひと。

しばらくの間柄だが、彼女の彼に対する思い入れは量りきれない。

「撤退、しよう」

セネルに向けてというよりも、独り言のようにさえとれる焦点の不確かさ。

「……わかった」

そう言いいながらも何か手はないかと考えているのは明白だった。

答えたセネルは彼女が一人で猛進するのではと、本気で心配になったことも嘘ではない。

二人でじりじりと後退しながら抜ける瞬間を見出す。

「ジェイ!必ず戻るから!」

何処かありきたりで、不安な言葉をいくら叫んでも返事はなかった。

「ジェイ…」

疾走しながらも後ろを二度三度振り返る彼女を、セネルは見ているしかなかった。










「セネル!!」

大きなウィルの声に導かれてなんとか合流の出来た二人はやはり苦戦していた二人の苦労を知る。

気絶だけなのだろうか、ぐったりしているクロエとノーマを見ると危機を感じてしまう。

「ジェー坊はどうしたんじゃい!」

槍を絶えず投げ、モンスターに距離を取らせるモーゼスにセネルたちは俯いて報告した。

「そがぁなことが出来るかい!」

やはり異を口にする彼に二人は反論も出来ない、だがウィルは冷静に策を受け入れた。

「よし、撤退しよう。モーゼスと俺でノーマたちを運ぶぞ」

「ウィの字!」

一度決断されたその言葉をは知らず受け入れていた。

犠牲はつきもの。

それは幼いころから叩き込まれていた言葉であったし、何度も実行したことのある言い訳。

それで皆が救われる。

残念だけれどたくさんは死なない。

片付けられた後にはわずかなものしか残らず、彼女自身忘れてしまった者もいる。

それが今回はジェイだった。それだけ。




それだけ?ほんとうに?




ならあの迷いを感じた瞬間はなに?




選択肢の無い選択をしたくなかったのでは?




ジェイを見捨てたくなかったのでは?




例え他の仲間を犠牲にしても




そうなんでしょう?




「っ!わかった、よろしく」

モンスターが徐々に狭まってくる中、黙り込んでいた皆を醒ましたのはの了承だった。

!」

!」

今度はセネルまで非難するように喉を震わす。

「セネルは先頭をお願い、二階先に行き止まりになる場所があるからそこへ行こう」

「いいのかよそれで!」

いいわけあるか、と叫べたら、そのくらい純粋であったころの自分ならどれだけ楽だろうと思った。

あの日助けられた、命を。

今度は見殺せと。

そう命令されるのが嫌で、苦し紛れに言葉を吐く。

「ジェイは大丈夫だと言った。それなら早く撤退して体制を整えて、彼を迎えに来るべきだ」

彼の言葉を信じろ、彼は自分でそう言った、だから大丈夫。

仲間を素直に信じられるころの自分であればいいのに。

平気というその意味が真逆の意をもつのではないかと疑いたくなるくらい、苦しい。

その苦しささえ、今彼の感じるものには敵わないだろう。

見捨てられる、その辛さを誰より傷にもつ少年。





























そもそも今回の依頼を持ってきたのは自分だ、とジェイは独りごちる。

ミュゼットからイザベラ伝いに集団化したモンスターの様子を調べて欲しいと。

以前のモンスターの凶暴化は収まり、グリューネという神の消滅を以って世界は元通りとなった。

水の民との関係は相変わらずだが、シャーリィやウィルの努力も通じてか、少しずつ変わってきているのは確かだろう。

その忙しさで今回参加しなかった彼女を除き、いつものメンバーでこの偵察に来ていた。

少し多すぎるとも思ったが誰を選ぶということも気持的にしがたく、少しの油断でこの有様。

全く、お笑い種だなと自嘲したのは何度目のことか。

背後を常に気遣い、壁に追いやられないように、仲間の元に行かないように、いつも以上の精神を費やして彼は動く。

道具の数も少なく、出来る限りの策を立てるもそれが追いつかないほどの数。

本当に舌打ちしたくなる失態を、己に深く刻んでいく。

「浮雲!」

メガント族のバランスを崩させ、いくらかの時間稼ぎの後詰まる群れに苦無を放つ。

数匹が消え、転がり、他にぶつかり、小競り合いを起こす。

隙を突いて場所を変え、間を駆け抜けながら距離をとって策を練る。

そういう風に動き回り、段々と足を弱め、自滅するのを狙う。

だが、こちらの体力消耗が激しいのもリスクだった。

こんな手で長時間もち続けるのは不可能。

そう、これはあくまで時間稼ぎ。

その後の逃亡についてまで考えられるほど、甘くはない。

「っはぁ、はぁ」

爆薬も残りが少ない、精神力も体力も、アイテムはとうに果たした。

無事に逃げられただろうか、そうふと頭が別のことを考える。

自分がこんな状況で、今にも死んでしまいそうなのに、不安が止まない。

「お人好し」

ついこの間、モーゼスが老婆を道案内して食事に間に合わなかった時、ジェイはそう言った。

あぁ、こんなことだと

「人のこと…言えません、ね」

それでもすっきりした顔でヘラヘラしていた、あんまり不憫だとがおにぎりを作っていたが。

そういえば、彼女にもまだ直接言っていなかったっけ。















ありがとう









命がけで自分を助けてくれて














こんな気持ちに、させてくれて




























2006.1.1
続きます、ってかジェイ夢本編が出来てからじゃないとわからない設定で書いてしまった。
ネタばれしてもいいから設定は!?な人は下へ。




















主人公は小さいころ事情でジェイの里に連れてこられ牢の隣で会います。
その時失態の罰で閉じ込められていたジェイは怪我で発熱。
それを救い逃げようとしたのが彼らの話です。

それから遺跡船で再び会ったころ、主人公はソロンの部下でした。
ジェイが生きていたのを知った彼女はソロンに交渉を迫り自分が更に罪を負うことを決め、
冷たく敵側となって現れます。
結局はジェイが仲間とともに助け、これからは一緒…というころです。
グー姉さんとシャーリィがいないのは面倒だったのと嫉妬(何。